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俺は、わからなかった。
彼の今の姿も、彼がヴァイラスを殴り飛ばしたことも、その背中から鋭利に伸びた赤い四枚羽の意味も。
ただ一つ分かるのは、彼が俺の親友であると言うことだけ。
額から流れる冷や汗を腕で拭い、俺は言った。
「『それは』……、何だ?」
「……」
赤い四枚羽。
それを指差して、俺は使明に尋ねる。
しかし、彼はそれに対しすぐに返答はよこさず、少し俯いた後言った。
「後で……、話すよ。ユウ」
「キュウギュウッ!!」
巨大なオウムの姿をしたヴァイラス。バサバサと耳障りな音を立てながら、まるでこちらを威嚇するように強く口ばしを鳴らす。
「下がってて。ユウに怪我はして欲しくない」
彼の赤い翼が強く光った。
赤は真紅となり、血の色となって光りだす。
天使の白い羽とはまるで似つかない、血の翼。
「ハァッ!!」
彼が地面を蹴ると、ヴァイラスに向かって拳を上げて跳びあがる。
空を舞うヴァイラスまでの地上からの距離は、軽く5メートルはありそうなのに、彼はそれにやすやすと辿り着いた。
「ギュアウッ!!」
彼の拳がヴァイラスのお腹の部分にあたり、痛々しい叫び声をヴァイラスが上げた。
「!」
が、ヴァイラスはそれでひるまない。
反撃の口ばしを、使明に向けて振り下ろす。
「使明!!」
俺は思わず叫んでいた。
――叫ぶだけ。
それ以上、俺に出来ることなど、なくて。
口ばしは使明の腹を裂き。
「ぐあああああッ!!」
彼の断末魔と。
赤い翼と赤い血が、夜空を照らした。
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