プロローグ:親友

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「やあ、今日も会えたね」 人のいない小さな公園で、一つ静かに揺れるブランコがある。 赤い夕陽に照らされながら、真っ白な彼は、どこか儚い笑顔で俺に向かってそう言った。 「暇だったからな」 そんな風に言いながら、俺は彼の近くまで寄る。 「今日は、珍しく昼御飯が豪華でね」 「へえ」 今日一日の出来事について語り出す彼に、俺は静かに耳を傾けた。 17歳になった彼は、昔から髪が真っ白で、肌も染み一つなく真っ白だ。 来ている服も同じく。 この公園のすぐ近くに病院があるのだが、そこの患者である彼はいつも真っ白な病人服を羽織っていた。 いつ退院出来るのか――、昔はそんなことも考えた時期があったが、もう二年間もこうしてこの公園で顔を会わしていたら、『ああ、彼とはきっとここでしか会えないのだろう』と、そう考えるようになっていた。 「聞いているかい?」 「さっきから首をふっているじゃないか」 「そうか。それは気付かなかった」 俺が無言で聞き入ると、たまに彼は今みたいに不安げに尋ねる。 その度に、俺は同じように返答するのだ。 「僕はね、君がここに引っ越してきてくれて、嬉しいよ」 「そうかい」 「そうさ」 だけど、この出会いは必然ではないか。 俺は曖昧に答えながら、そう思った。 俺に限らず、大多数の人間はこの町に引っ越してきている。 理由は簡単で、何故かこの町は出現頻度が低く、安全なのだ。 「ユウは、今日も学校だったんだろう」 「そりゃ、平日だからな」 「いいなあ、僕も行きたいなあ」 「面白いものじゃねえさ」 それに。 のんびり学校に通っていられるのは、この町くらいだろう。 それでも危険がないわけじゃないが、毎日のように『ヴァイラス』が出没しないだけ、全然マシだ。 ああ、そうだ。 少し、昔話をしよう。
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