1349人が本棚に入れています
本棚に追加
「やあ、今日も会えたね」
人のいない小さな公園で、一つ静かに揺れるブランコがある。
赤い夕陽に照らされながら、真っ白な彼は、どこか儚い笑顔で俺に向かってそう言った。
「暇だったからな」
そんな風に言いながら、俺は彼の近くまで寄る。
「今日は、珍しく昼御飯が豪華でね」
「へえ」
今日一日の出来事について語り出す彼に、俺は静かに耳を傾けた。
17歳になった彼は、昔から髪が真っ白で、肌も染み一つなく真っ白だ。
来ている服も同じく。
この公園のすぐ近くに病院があるのだが、そこの患者である彼はいつも真っ白な病人服を羽織っていた。
いつ退院出来るのか――、昔はそんなことも考えた時期があったが、もう二年間もこうしてこの公園で顔を会わしていたら、『ああ、彼とはきっとここでしか会えないのだろう』と、そう考えるようになっていた。
「聞いているかい?」
「さっきから首をふっているじゃないか」
「そうか。それは気付かなかった」
俺が無言で聞き入ると、たまに彼は今みたいに不安げに尋ねる。
その度に、俺は同じように返答するのだ。
「僕はね、君がここに引っ越してきてくれて、嬉しいよ」
「そうかい」
「そうさ」
だけど、この出会いは必然ではないか。
俺は曖昧に答えながら、そう思った。
俺に限らず、大多数の人間はこの町に引っ越してきている。
理由は簡単で、何故かこの町は出現頻度が低く、安全なのだ。
「ユウは、今日も学校だったんだろう」
「そりゃ、平日だからな」
「いいなあ、僕も行きたいなあ」
「面白いものじゃねえさ」
それに。
のんびり学校に通っていられるのは、この町くらいだろう。
それでも危険がないわけじゃないが、毎日のように『ヴァイラス』が出没しないだけ、全然マシだ。
ああ、そうだ。
少し、昔話をしよう。
最初のコメントを投稿しよう!