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貧民がいれば富民がいる。
国民がいれば、王がいる。
下がいれば、上がいる。
生物の頂点は、我々人類だった。
大昔は恐竜なんぞが頂点に君臨し、滅びた。
地球の歴史の中で、生物の頂点なんてものは定期的に入れ替わっている。
そして今また、頂点が入れ替わる時が来たのだろう――、なんて偉い学者さんは言っていたよ。
人類の天敵。
アマゾンの奥地でも、海の底でもなく、普通にビル街に現れては人々を食らって生きる化け物。
『ヴァイラス』。それはそう呼ばれている。
ここに引っ越す前の町で、俺の両親はそいつらにパックリ食われちまった。
あれは確か、蟷螂みたいな形をしたヴァイラスだったなあ。
2メートルはありそうな巨体の癖してすばしっこく、父さんも母さんもあっさり捕まって、食われた。
当たり前のように自衛隊の銃弾くらってもピンピンしてたし、最終的には戦車がやって来て、漸く倒せたんだったかな。
……それまでに何十人と食われちまったけど。
まあ、俺もよく生き残れたもんだ。
と、そんなこんなあって、家族を失った俺は途方にくれていた。
他に頼れる人間もいないし、とりあえず両親が残した財産を持って、この町に引っ越すことにした。
それが三年前。
この町は不思議なことにヴァイラスによる被害が極端に少ない。
それが理由で、引っ越してくる人間は多い。
で、『彼』。
今もブランコに揺られながら話を続ける彼と出会ったのが、二年前だ。
あの日も今日と変わらず、一人きりでブランコに揺られて俯いていた。
焦点の合わない視線。
まるで抜け殻のような薄さで、彼は存在していた。
俺には友達がいなかった。
引っ越してから一年ほどたったその頃は、まだ色々と忙しくて学校にも通えていなかったし、とにかく話し相手が欲しかった。
だから、真っ白な彼に、俺は声をかけてみることにしたんだ。
――天神 使明(しめい)。
それが彼の名前。
――承 融生(ゆうせい)
俺の名前。
俺たちは、そうして出会った。
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