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一度話すようになってからは、殆ど毎日俺達はこの公園で会っていた。
別に何かして遊ぶわけでもなく、ただその日あったことをポツポツと会話する。
それだけ。だが、それだけでも安らかな時間だった。
別に会う日を互いに決めたりはせず、俺が公園に来ると、決まったように彼はそこにいる。
例え大雨が降っていようと、やはり彼はそこに座っているのだ。
身体の弱い彼に唯一許された外出場所。
それが、この公園。
「さて」
俺はブランコ横の柱に寄りかかっていた身体を起こし、一歩前へ足を出した。
「俺はそろそろ帰るとするよ」
「うん」
彼は小さくうなずく。
そして彼もゆっくりブランコから立ち上がり。
「っと……」
フラりと、何かにつまづいたかのように、態勢を崩した。
「アブねえな」
俺は両手を差し出して、こけかけた彼の身体を支えてやる。
「ありがとう」
「お前は本当に何もないところで転ぶよな」
「目が悪いんだよ」
「だから、眼鏡つけろっていつもいってるだろう」
彼は基本的にドジだ。
よく転ぶし、周りが見えていないことも多い。
目が悪いとは本人談だが、きっと言い訳で、ただのドジだと俺は思っている。
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