プロローグ:親友

4/19
前へ
/272ページ
次へ
一度話すようになってからは、殆ど毎日俺達はこの公園で会っていた。 別に何かして遊ぶわけでもなく、ただその日あったことをポツポツと会話する。 それだけ。だが、それだけでも安らかな時間だった。 別に会う日を互いに決めたりはせず、俺が公園に来ると、決まったように彼はそこにいる。 例え大雨が降っていようと、やはり彼はそこに座っているのだ。 身体の弱い彼に唯一許された外出場所。 それが、この公園。 「さて」 俺はブランコ横の柱に寄りかかっていた身体を起こし、一歩前へ足を出した。 「俺はそろそろ帰るとするよ」 「うん」 彼は小さくうなずく。 そして彼もゆっくりブランコから立ち上がり。 「っと……」 フラりと、何かにつまづいたかのように、態勢を崩した。 「アブねえな」 俺は両手を差し出して、こけかけた彼の身体を支えてやる。 「ありがとう」 「お前は本当に何もないところで転ぶよな」 「目が悪いんだよ」 「だから、眼鏡つけろっていつもいってるだろう」 彼は基本的にドジだ。 よく転ぶし、周りが見えていないことも多い。 目が悪いとは本人談だが、きっと言い訳で、ただのドジだと俺は思っている。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1349人が本棚に入れています
本棚に追加