1349人が本棚に入れています
本棚に追加
――翌日。
俺は学校にも行かず、昼過ぎまで家に閉じ籠っていた後、ふとある衝動にかられて、部屋を出た。
ヒュウと渇いた風が吹く。
少し寒い。
長袖のパーカーだけでは、この時期は少々薄着過ぎたか、と。
俺はポケットに手を突っ込みながら軽く後悔する。
昨日渡った踏切までたどり着く。
あの大きな血痕は、多少薄くなっていたものの、相変わらずそこにあった。
不可解は、変わらずそこに存在していた。
「……」
俺はその血痕から目をそらしながら、更に歩き続けた。
向かう先は、いつもと同じ。
使明がいるであろう公園に、俺は向かっていた。
とは言え、今日はいつもと時間が違う。
学校が終わってからいつも会っているのだが、今日はまだ学校のある時間だ。
使明はまだいないだろう。
だが、例えそうだとしても。
俺は使明と過ごすあの空間に、身を置いていたかった。
「……!」
ふと、俺のポケットがぶるぶると振動を発する。
携帯のバイブレーションだ。
俺は携帯を取りだし、開く。
見ると、市からの危険通告メールだった。
大抵この手の物の中身は地震情報か、あるいは。
――ヴァイラス出没を知らせるメール。
俺の携帯に届くと言うことは、この町のどこか、決して遠くはないところでヴァイラスが現れたと言うことだろう。
基本的に奴らは地中、空、山や森の中に生息し、時に人を喰らいに町中に姿を表す。
この辺りに山も森もない。大体が空か地中からだ。
メールの内容に目を通してみれば、ここから少し北方で鳥型のヴァイラスが現れたと書いてある。
地中に住むヴァイラスならいいが、鳥型となると移動範囲が広い。
ここから少し離れた場所とは言え、決して安心は出来ない。
「……」
俺は、パタリと携帯を閉じ、しまった。
だから、何だよ。
どうせ、どこにも逃げるところなんてないんだ。
だから俺が向かう場所を変える必要なんてない。
死ぬのは怖いくせに、実際に死が迫っていなければ、何と無頓着なことか。
カッコ悪いな、俺。
……まあ、いいさ。
カッコつけたところで、この世界じゃ何の意味もないんだから。
最初のコメントを投稿しよう!