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男が
執拗に指をねぶり
障子に触れる
さながら
蛇に睨まれた蛙の様に
私は、ぽっかりと空いた穴を、見ている事しか出来なかった。
愛する妻が
義父の手によって組まれた
遺伝子配列のやうな繩に繋がれ
悶え
絡まる姿を。
私は
ただ呆然と
見ている事しか出来なかったのだ。
それなのに
ぽっかりと空いた穴は
私の心のようだと言うのに
妻の目線は
そんな私の小さな穴を捉えたのだ。
妻から見れば
只の黒い点。
されど確かに捉えたのだ。
嗚呼
愛しい妻よ。私を見ないでくれ…
義父に逆らえぬ私を見ないでくれ…
毒蜘蛛のような義父に喰われながら私を捕らえようとしないでくれ…
妻は見透かすように微笑むだけ。
夜ごと繰り返される情事。
私は
逃れる為に
私の遺伝子配列を組んでいる。
なぁ、妻よ
私の顔は義父のように
歪んでいるかい?
妻が毎夜義父と戯れる頃
母親似の美しい息子は
私の手により壊れていった。
…否。
壊れて行くのは私の方かい?
愛しい妻よ。
―了―
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