サイボーグだ!

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すると突然、私の目の前に肉塊が投げ捨てられた。いや、違う。肉塊である事は間違いないが、これは人だ。私の目の前に人が投げ捨てられたのだ。 しかし、これを人と形容していいのだろうか。腹部は内臓ごとえぐり取られ、両足は太股辺りから引きちぎられたかのようになって、左腕は肩から無くなっており、唯一無事な右腕も原形が分からなくなるほどに不自然にひしゃげている。そんな物体が私の目の前に投げ捨てられたのだ。その時の私の驚きは凄まじかった。口から心臓が飛び出る……いやむしろ心臓から口が飛び出るほどのビックリ具合だった。正直、私が科学者として医者として人体のグロテスクな部分に触れていなかったら、その場で気を失ってもおかしくない。それほど凄惨な光景だった。 一瞬、言葉も思考も何もかもが停止したが、私はすぐに我に返り状況を確認した。どうやら、この男の子は先のテロの被害者のようだ。身体の損傷からして、瓦礫の下敷きになっていたのは間違いないだろう。 私は近くにいた、さっきまでこの子を担いでいたとおぼしき救急隊員に声をかけた。 「おい、そこのお前。この子はどうするんだ?」 救急隊員は言った。 「どうするも何もそんな状態ではもう助からない。可哀相だが、俺にもあんたにも出来る事はない」 そうして彼はその場を去っていった。 少し厳しいような気もしたが、彼の言う通りだろう。誰がどう見ても目の前の男の子は助からない。わざわざ助けられるはずもない命に手を差し延べる暇があるなら、もっと別の助ける事の出来る命を助けるべきだ。
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