姿なき声

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何だろう? 頭の中で声がした…? 《本当は連れて行きたいんだ…わかるだろう?》 「誰!?何で頭の中から声がするのよぅ」 パニックになりかけた私に優しい声が語りかけてくる。 《大丈夫だから、聞けよ》 「でも、負担になるんだよ、きっと」 《一緒に行くより苦労がないと思ってるんだよ。》 「そんなの、私、頑張るのに…」 言えなかった本音と一緒に涙がこぼれおちた。 「お母さんと一緒なら、頑張るのに…」 もう一度口にして、クッションに顔を埋めた。 《母さんも、お前がいたから、頑張ったんだよ。でも、毎日続く喧嘩をお前に聞かせたくないと思ったんだろうな…》 「そんなの…」 《あと半年だろ。卒業証書見せてやれよ。》 「うん」 《行き来はできるんだ。会いたくなったら行けばいいよ》 「そうだよね。今まで、母さん、頑張ったんだもんね」 《とても頑張っていたよ》 「何であなたがしってるの?」 《ずっと見てたから…。遥と母さんが泣いてるの、ずっと見てたから…》
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