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刻は夕暮れ。
空が直、闇に染まり行く頃である。
「……ハッ…ハッ……ッ」
鬱蒼と茂った森の中を一人の少年が疾走する。
数秒後、少年が通ったところがガサガサと音が鳴り、黒い『何か』が少年を追うように駆けた。
少年は走りながら後ろを振り向き、ウンザリした表情にかわる。
「くっそ……この化物[モンスター]めっ!いつまで追って来るんだよ!?」
少年が悲痛な声で叫ぶ。
幸い今は雨が降っているせいで視覚と嗅覚が使い物にならなくなり、黒い『何か』………モンスターは音に頼って少年の位置を掴むしか無いので、慎重に追い詰めようとする。
それが、未だにモンスターに追いつかれていない理由だった。
だが視覚が使い物にならないのはこちらも同じ事であり、結果的にモンスターにとっても少年にとってもメリットは一つも無いのである。
それから数十分後
「い、行き止まり………?」
前が見えないせいで少年は出口と逆に進んでしまっていたのだ。
「クソッ!」
少年は精一杯の悪態をつきモンスターが追って来るだろう方向に体を向ける。
耳を澄ませばモンスターが迫って来る音がする
それも複数。
「くそっ………」
二度目の悪態
これは自分にむけての物
こんな所でこんな『力』を使わなくてはいけない自分にむけての物だった。
顔を引き締め、右手で背中から剣を引き抜き、
『左手を自分の首元に当てる』
それと同時に茂みからモンスターが飛び出した。
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