孤独

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その後五分ぐらいして激しく玄関のドアを開ける音がした・・先生が入ってきて笑いながら涙を流す俺を見て思いっきり強く抱き締めた・・・ 少し正気に戻った・・・ 笑いは無くなり、大声を上げて泣いた・・・ 「大丈夫、先生が付いてるから・・・大丈夫、大丈夫・・・」 先生は小さな子供でもあやすように優しく俺の背中をさすった。 何とか先生は俺を立たせ、車に乗せて病院へと向かった。 大きな病院だった・・・ そこの地下の一室で親父の亡骸を目の前にした・・・ 再び泣き崩れ、もの凄い孤独感に震えた それから俺はもともと不幸な家庭で両親には身よりもなく、引き取ってもらえる親戚なんて全くなかったが、程なくして、担任の先生が俺の面倒を見ると言い出してくれて、俺は先生と一緒に暮らす事となった。 それから十年あまり、先生に育ててもらったのだが、先生の家は実家の隣町にあって、悲しみを忘れる為か実家には近寄った事が無かった。 高校卒業の時、先生が大学に行けとうるさく、仕方なく進学することにしたのだが、大学の資金などいくら親代わりといえど、先生に甘えるわけにいかず、実家を売り払い、そのお金を大学資金にし、先生の家もでて一人で暮らした。 「あれから十五年あの近くに近寄ったこともねえなあ・・・明日久しぶりに行ってみるかな・・・墓参りもしたいしな」 そんな事を考えながら俺は寝てしまった。
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