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「…麻央、敢えて聞いて差し上げます。そこのレジャーシートで何をしていたのですか?」
麻央。
そう呼ばれた、真に吹き飛ばされたであろう人物に、津樹は問い掛ける。
その人物は未だもうもうと砂埃が舞い上がる中にいるようで、津樹の視線も実の視線も真っ直ぐとそちらに向かっていた。
(…いや、答えるのなんて無理なんじゃ…)
男は、いや、このシーンを見ていたなら誰だって思うだろう事を思っていた。
無理だ。
真は麻央という人物を殴り飛ばしたのか蹴り飛ばしたのかは定かではないが、あの音は凄まじかった。いや、ホントまじで
更に麻央がたたき付けられた先にはコンクリートの壁。しかもよく見れば、そのコンクリートの壁にはひびが入っている。
砂埃で殆ど見えたものではないが、男には微かに見えた。
いや、無理。絶対無理!!
答えるどころか、むしろ生死の心配をした方がいいと考えるほどだ。
護衛の二人だってかなり驚愕の表情をしている。
すると突然、暫く、暫くも経ったか疑問に思うほど突然に、コンクリの中から、恐ろしいほどの勢いで誰かが起き上がってきた。
がばっ!とかじゃなくて、こう、ぐわぁばぁっ!って感じで。
「ひぃっ!?」
それを見た男は思わずと引き攣った声を上げた。こんな声を出したのは、小学生の頃に女子にカエルを目の前に押し付けられた時 以来である。
あ、いや、別に今はそんなん関係なくって。カエルだって今は小さいのなら何とか大丈…いやだから今はそんなん関係無いんだってば
男がぐるぐると考えている中、その誰かは手に何かを持ったまま また勢いよく立ち上がった。
その誰か、というのはやはりぶっ飛ばされた麻央以外に有り得はせず、男や護衛の二人はぱちくりと目を瞬かせた。
麻央と思しき人物は淡い月光りを受けて、これでもかと目立つ、尻尾のように長い紅い髪を靡かせて、怒っているらしく荒々しい足取りでどしどしと真に向かい歩く
コンクリートに埋め込まれん程の勢いで叩き付けられたというのに、その歩く様には一辺の傷も見当たらない
麻央は片手にあったものを両手に持ち直した。
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