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陸奥の言う通りだった。スノーモビルの後ろには人がうつ伏せで寝そべっているソリが繋がれていた。
彼らが攻撃している後方には葉を落とした木々たちの森林がある。そして森林を入ってすぐに事前情報にあった廃屋と坑道への入り口思わしき洞窟もあった。彼らの大規模攻勢の為か、雪山は中心部が崩され、通りやすいようになっていた。そして洞窟の入り口はかなり大きく、大型ダンプが無理なく通行できるほどの高さはある。入口周辺にはブルドーザーやホイールローダーが合計四台、そして大型ダンプも数台あった。
「顔は分からないね」
大和の零式三座水上偵察機が呟いた。頭をすっぽり覆う黒や白色基調のヘルメット、そしてスキーウェアで性別さえも分からない。
当然寝そべっている彼らの頭の先には大きな小銃、更には重機関銃を構えていた。その数は合計十五。重機関銃が八、大きな小銃が七だ。
とてもテロリストが装備するような武器ではないのがすぐにわかった。
「あれ、さっきのドデカいライフルと一緒だ」
龍驤の九七式艦攻の一匹が呟いた。
「いわゆる対戦車ライフルとか言うモノかね?」
もう一匹の龍驤の九七式艦攻も呟く。これに今度は神鷹の九七式艦攻が
「これはこっちで小細工しましょう。いつまででも好き勝手させてられないわ」
と提案してきた。曰く
「今いるメンバーだけじゃ人を攻撃するには少ないでしょう。だけどね、ただ見て報告じゃやってきた意味ないし」
と。
「よし、僕らが戻っている間に細工しておいてくれ」
武蔵の零式観測機がそう告げると直ぐに二匹が武蔵のもとへ戻っていく。
「でも如何するんだ?それだけは聞いてから戻るよ」
大和の零式三座水上偵察機は他の妖精達から何をするかを聞いたのだった。
*
絶絶え間ない弾幕を潜り抜けて妖精たちが戻ってきた。その間に別の場所にいる高雄や比叡、夕張などが闇雲に砲撃を加えたりしたが不発したのは明白だった。
「どうだった?」
大和が妖精達に尋ねると
「大型ライフルにマシンガン。そりゃあ接近できないよ」
と武蔵の零式観測機が答える。
「だから小細工を始めた。小細工の内容はスノーモビルから橇を切り離す。これだけ」
と大和の零式三座水上偵察機が答えた。
「私や龍驤に神鷹のが帰ってこないなと思いきや、そう言う事か!」
威嚇射撃し戻って頭を伏せた翔鶴もそう返答する。声に必死さが残っての返事だ。
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