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『良かろう。せめてもの情けだあの娘は助け、お主は楽に逝かせてやる。』
そう言って、奴は刀を振り上げた。
僕は静かに目を瞑り最期の時を待った。
だが、いくら待っても斬られた感触は襲って来なかった。
もしかしたら、もう死んだのか?そんな疑問が浮かび始めた頃だ...
『丸腰の人間、しかも子どもに刀を振るうとは感心しないな。』
『『!!!』』
僕のみならず、武士の霊も驚いた。
僕が目を開けて周りの状況を確認すると、銀髪をなびかせた、さっきの台詞を吐いたであろう幽霊が武士の刀を素手で掴んでいた。
人間でないと分かるのは、そいつの足がないのと有り得ない霊力を発しているからだ。
『あんまり高位の霊じゃないな、あんた。まぁ、並よりはちょっと上だろうが。ちょっとどけよ。俺はそっちの坊主に話がある。』
そう言って奴は武士の霊を思いっきり握った刀を振り回して、ぶっ飛ばした。
なんて無茶苦茶なやつなんだ。
『お前、俺と契約しないか?そしたら、お前は力を手に入れ、あの女の子を助けられるぞ。』
『何だ?その契約って?』
『な~に、簡単だよ。お前に俺が力を貸してやるから、お前は霊を倒しさえすればいいんだよ。』
一瞬どうしようかと迷った...
だが、どうせ死ぬ運命にあったわけだ。
リスクなんて考えてられない。しかも、今は一刻を争う事態、とやかく言ってる暇はない。
そう結論を下した僕はその提案に二つ返事を出した。
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