記憶ノ欠片

序章

　
腹からﾄﾞｸﾄﾞｸと血が流れ出ている。

少女は痛みに顔をしかめた。

彼女の回りには既に真っ赤な血だまりができていた。

「…どうして…こんなことを?」

少女は痛みに耐えながら、自分の目の前で包丁を持って立っている中年の男に向かってそう言い放った。

傷口を左手で押さえているが、出血は止まらない。

男はﾆﾔﾘと不気味な笑みを浮かべ、少女の目を見ていった。

「お前は邪魔なんだよ、俺ら組織にとってな！」

それを言い終えると、その言葉がｽｲｯﾁだったかのように、男は少女にゆっくりと歩み寄って行く。