わたし

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「じゃあね。」 消え入るように流れた言葉は、わたしの意味を軽くした。 名前も知らない男の人は何かを言っていたけど、それはきっと何の価値もないから わたしの言葉と一緒に消えた。 部屋を出ると外は寒くて、コートの裾からはみ出た足はなぶるような風に震えては先を目指した。 先、なんてゴールとは違うけど。 それを後退と言ってしまうと、なんだか心まで寒くなりそうで 柄にもなく前向きな考えの末、偽りだけど嘘じゃない言葉を見つけただけ。
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