5人が本棚に入れています
本棚に追加
ずきずきと痛む頭を押さえながら、学院の庭のベンチに腰をかける。
ったく、手加減ってものがわかんねーのかよ、あのバカ。
『あのバカ』。そう俺の幼なじみであり、乱暴な女、ラムのこと。
ちょっと可愛い女の子を見て、色々妄そ…いや考え事してただけなのに、毎回全力で鳥で攻撃して来やがって。鼻血だけでも出血多量なのに頭からも出たら俺、死ぬからな。
いっつも、そうだ。思い返せば、物心ついた時には近くに居た。よく言えば俺の事をよく分かってる。悪く言えば、分かりすぎてる。あまり顔に出さないようにしていても、あいつにはばれてしまう。本当に可愛げのない奴だ。
……あっ、少しだけあった。最近アイツ、ほんの少しだけど可愛くなった。………あれか?恋する乙女か?ウケるな、それ。
いや、きっとそのうち本当に好きな奴が出来て、付き合ったり、結婚したりすんだろうな。
そう考えたら、少し、少しだけアイツが、ラムが遠くに感じた。
あー、何だっていうんだよ。
「あっ、ノア」
後ろから声がして、ベンチに腰をかけたまま後ろにそって、誰だか確認する。…まぁ、声でわかっけどさ。
「乱暴女」
「うるさい、変態男」
あーいえば、こう言う。だけど少しだけほっとした自分がいた。
「で、何?」
「もーお昼だけど、まだ食べてないでしょ?一緒にご飯食べ行くよ」
「……なんで断定してんだよ」
「あら?行かないの。残念~。今日のランチのデザート、美味しそうなチョコケーキだったのにぃ」
白々しい。俺がチョコ好きだと知っていながらそう言うとことか、本当に性格悪いな。
「誰が行かないって言ったよ。行く」
仕返しに方向音痴のことをつついたら、『今日は変態さんにエスコートしてもらうから大丈夫~』なんて軽く返す。
何か、一生こいつには適わないんだろうと思いつつ、カフェテラスの方へ足をすすめた。
幼なじみ
<こいつの隣は、まだ俺の特権><いつか、こいつの彼氏が出来たら絶対いびってやろう>
最初のコメントを投稿しよう!