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「ねぇ、髪型、変えないの?」
人の部屋に上がり込んだ上、ベッドの上を占領した幼なじみがこちらを見ずに呟く。
「はぁ?」
内心一番その質問に触れられると痛い人間にその質問をされるとは、と焦ったが平常を装って聞き返す。
「だから……たまには、前髪をピンで留めたりとか、しないの?」
相変わらず人の枕につっぷしてそう聞いてくる。つまりは今日は譲る気はないということか……
はぁっと息をはくと、前髪を手近にあったヘアピンで留めてみる。
「これでいい?」
その声にラムはのっそりと体を起こして、眉間に軽くしわを寄せて呟く。
「……傷、痛くない?」
いつも前髪で隠している俺の左目には、大きな一本の傷がある。ちなみにこの傷は視力にも影響していて、左目は明るさしかわからない程度の視力しか残っていない。
ぶっちゃけた話、俺はこの傷をなんとも思ってない。左目がこうなったのは仕方ないし悔やんでも何か起きるわけじゃない。
ただ、こうやって隠しているのは、この傷をみるとラムがむすっとするから。
この傷が、自分のせいだと思っているから。
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