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この傷は、小さい頃。それこそ幼等部のころだな。二人でラムの家で遊んでた時、誤って俺は木の枝にぶつかり、まぶたをすっぱりと切ってしまった。
小さい子どもに大量の出血はトラウマになったんだろうが、それよりも、自分と遊んでたときに、しかも自分の家でそうなったことを自分のせいだと思い込んでた。
だから、この傷をみると、泣きそうだけど、我慢してむっとした表情をする。
いつの間にか、傷を隠すことで、その表情から逃げてたし、話題を出そうとしなかった。誰かが目のことに触れるのを避けていた。
なのに、なんでおまえが触れるんだよ、ばぁか。
「痛くないし」
「…傷、ふさがんないの?」
「さぁ?でもさ、俺実はこれ気に入ってんだけど」
「はぁ?」
「顔に傷がある男ってさ、ちょっとかっこよくね?影がある男に、女は惹かれるっていうし」
きらっと決めて言ってみると、ラムはぶっと吹き出して笑う。
手のかかる奴、やっと笑った。
「ばぁか、あんたが影があっても、変態じゃもてませんから」
「おまえの目が節穴なんだよ。俺、もってもてだぜ?」
「どこが!しかもゆき君とか下級生まで手に掛けて。バカノア」
ひとしきり言い合うと、ラムは一言呟いて、窓から待たせていた鳥と一緒に自分の部屋へと戻っていった。
ばかなやつ。今日はそれがいいたかったわけか。
呟いたのは小さくて聞き逃しそうだったが、「たまには、そういう髪型もいいと思うけど」と言っていた。
今更馴染みのある髪型を帰るのはめんどくさい気もする。けど、たまに、前髪をわけるのもいいかなんて、あいつがいなくなった部屋で読みかけの本を開きながら、くすりと思い出し笑いをしてみた。
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