沖田総司

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…喜んでくれるでしょうか? 小間物屋で買った手鏡を握りしめて足早に店に向かう。 店に着くと、間食時とあってか今日も繁盛している様子であった。 邪魔にならないよう、少し離れた場所で混雑が落ち着くのを待つ。 ――――――――――― 「総司さん…!」 不意に声を掛けられ、何時も通りの笑顔を向けてくれたことに感謝する。 「彩乃さん!」 人目も憚らず抱き寄せたい気持ちを一生懸命抑える。 「来てくれたんですね!」 喜んでくれるんですか…? 「早く奥にどうぞ!」 上がって待って良いのですか…? こんなに待たせた私を。 あんなに危ない目に遭わせた私を。 ――――――――――― 部屋にあった団扇を借りて仰ぎながら待つ。 …なんか、団扇からも彩乃さんの匂いがする… 横になっているうちにウトウトしてしまった… ササッという衣擦れの音で目が覚める。 「あっ。起こしてしまいましたか?お疲れなのにすみません。」 「いえ…私こそ寝てしまってすみませんでした。」
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