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驚く程かすれた声が出た。
動揺していたとはいえ…情けないな。
少し経つと、出窓を叩く音がした。
「山南さん…山南さん…」
愛しい女子(ヒト)の声。
戸を開ければ、髪を乱した明里の姿が目に入る。
「山南さん…何でこんな…」
「いいかい。明里。良く聞くんだ…」
「身請けしてくださったの、山南さんなんでしょう?何で黙っていたんですか!」
「…明里。」
「いつか、一緒に郷里へ行くって…!言ったじゃないですか…!」
「…明里!」
…初めてだった。
明里がこんなに取り乱すのは。
格子越しに指を絡め、ゆっくりと言い聞かせる。
「いいかい?私は明日死ぬ。君は、もう自由の身だ…!好きに生きなさい。」
泣き出す明里…
そう言えば、泣き顔を見るのも初めてだ…
「但し…他の男と一緒になっても…私のことは忘れないでくれるかい…?」
こんな時にまで嫉妬…
「私の仏の面のことは、死ぬまで黙っていてくれるかい…?」
「山南さん…」
絡めていた指をほどく。
「何時もみたいに笑った顔を最後に見せてくれ…!」
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