街の片隅

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並んで歩いて、やっと着いた頃には、もうすっかり日が傾いていて 「子猫、まだ大丈夫ですか?」 途中までは微かに聴こえいた鳴き声もいまはもう消えてしまってる 「まだ温かいよ。だいぶ前に鼓動は止まってるけどね」 「…言ってくれたら、良かったのに。」 なにも知らないで、話をしてたなんて、恥ずかしい 悔しい? 「言ってくれたら、帰ったのに。って?」 「ち、ちがいますよっ!」 寂しい…だ。 自分だけ茅の外みたいで。 「最後まで居るって、約束したじゃないですか…」 「律儀だな。まあ、お陰で退屈しないで此処迄来れたから、ありがとう」 …初対面なのに、もう何度この男から『ありがとう』と言われただろう。 子猫を助けてくれてありがとうと言うべきは自分のほうなのに。
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