一章:初めてのおつかい

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   エリア内の特産キノコを蹂躙し尽くした俺。そのテンションはうなぎ登りだ。  両手で抱え切れないほどの金の元。一つ一つのキノコがたまらなく愛しい。  しかし思い返してみると、気味が悪いほどウマくいったな。モンスターにも出くわさず、且つキノコが大量に手に入った。  ここで一般人なら「まさか今から強制イベントが!?」とか思うだろう。それも死亡フラグの方のイベント。  しかし神の御子こと俺は違う。このまま何事もなく、大金を手に入れる未来像が確実に出来上がっている。  この俺の前では強制イベントなど意味を為さないのだ! フハ……フハハハハハハ!!! 「……さて、帰ろうか。桃色な未来が俺を待ちわびているだろうし」  そう呟くと、大量のキノコを抱えたままおっちらこっちらと歩き出した。  初めこそバランスを崩さないようにゆっくり歩いていたが、上がり続けるテンションを抑えられずに、遂には走り出す。果てにはスキップをしだした。  にやける口を正す事も、膨らむ妄想を抑える事もしない。下品な顔つきと滴る涎。  そうして俺の妄想が最高潮に達した時、異変は起きた。 「ンモオォォォっ!!」  牛のような鳴き声を上げながら、草食獣が爆走し始めたのだ。その様子はまるで何かから逃げるよう。  かなりの数の草食獣が一斉に走り出す光景は、なんとも言い難い。見事と言えば見事だし、騒がしいと言う事も出来る。  するとすぐに半端でない地響きと、ものすごい量の砂塵が辺りを覆い包んだ。視界は悪いし、聴覚も満足に働かない状況に陥った。  俺は現状に戸惑いながらも、彼らが一体何から逃げているのか考えてみた。  草食獣が逃げるということは、自身の命が危ないということ。つまりは狩られる危険性が有る、と。  そしてここで言う狩る側、捕食者とは、一体……っ!? 「俺しかいないだろ、常識的に考えて!」  そうだ! 俺に違いない!  特産キノコを圧倒的な武を以て陵辱した事実に、草食獣が恐怖しているんだ! その他は考えられないっ!!  俺は超える! 人間の―――ハンターの域をッッ!!!  ―――お決まりの展開ではあるが、直後。背後から何かとてつもない爆音と、尋常ならざる風が俺を襲っていた。  欲張ると、本当にロクな事がない……。
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