一章:初めてのおつかい

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   索敵を続けながら特産キノコを探す様は、熟練し洗練されたハンターのそれだ。  はっ! モンスター? モンスターが怖くてハンターが出来るかよ!! 俺は英雄だぜ?  俺のスキルを持ってすれば、ブルファンゴだのランポスだのは余裕だね!  明確な死亡フラグを乱立させながら索敵をしてみた結果、俺はここにはモンスターがいないという結論に至った。  モンスターはおろか、なにか生物がいれば匂いや音、気配がする筈だ。だが、それら様々な物はこのエリアからは微塵も感じない。  むしろこのエリアより離れている、さっきのアプノトスの気配すら感じる程だ。  モンスターが居ないとなれば話は早い。  俺は堂々と特産キノコを探す事にした。 「……ここか! それともそこか!!」  自身の幸運を噛み締めながら、木の陰や雑草の中など、キノコが生えてそうな箇所を探す。  キノコはジメジメとした地を好むらしいので、出来るだけ湿っていそうな所に重きをおいた。  途中、蜘蛛の巣に引っかかったり、そこら中に転がってる倒木に躓いたりしたものの、なんとかキノコの集団を見つける事に成功した。  それらは、ぶっとい倒木と倒木の間に、申し訳なさそうに ひっそりと生えていた。  ようやっと見つけたキノコ。俺にはその全てがとても価値があるように映った。  でも俺の目的は特産キノコだけだ。他にも価値の高いキノコが無い訳ではないが、欲張るとロクな事が無い。  俺は穴があくほどガン見した特産キノコの特徴や形、柄を思い出す。  たしか、特産キノコは丈が短い割に太く、笠が広いのが特徴の筈―――。
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