一章:初めてのおつかい

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「―――…なさそうだな、ここには」  期待は落胆に成り下がり、口からは嘆息が漏れた。キノコが沢山ある筈のこのエリアには、キノコ自体の数も少なく、且つお目当ての特産キノコも無かった。  そりゃあ溜め息もつきたくなるさ。 「さてはあのハンター、デマ流しやがったな? そんなにキノコが大事かよ」  情報をくれたハンターの人の良さそうな顔に、頭の中でパンチをかます。しかし気分は少しもスカッとしなかった。  逆恨みをしたって、溜め息をついたって特産キノコが見つかる訳ではない。  キノコを見つけるには歩くしかないのだ。でも、どこを?  情報から得たキノコの場所をマークした手製の地図をポーチから取り出す。  今俺が居るエリアが最有力候補だったが、望みはまだまだある。  他にもキノコがあるらしきエリアなり方法は二、三ある。  一つは、断崖絶壁を登った崖の上。  一つは、ここから更に奥に進んだ所に住む、ジジイと交換。  一つは、見晴らしの良い丘の木陰。  最初に挙げたエリアは問答無用で却下。  俺には崖を登る腕力も胆力もない。別の道から崖の上に出られるが、その為には飛竜の巣を中継しなければならない。  そこで飛竜に遭遇したら、即オシャカだ。だから却下。  次のジジイとの交換だが、これも出来るだけ避けたい。  確かに地理的には一番近いが、このジジイが偏屈らしく、何か良い物を持っていかないと交換してくれないらしい。  俺には担保となる物などない。だから行くだけ無駄なのだ。
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