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「佐田さん、佐田さーーん」 事務所に着くと、田島さんが大きな声で『佐田さん』なる人の名前を呼ぶ。 が、中からは何の返事もない。 「あれ?可笑しいな、佐田さんが居るはずなんだけど。 矢野さん、そこ座って。救急箱持ってくるから」 ソファーに座ってあたりをきょろきょろ見渡す。 整然とされてる。 綺麗な事務所。 こういう綺麗なところで田島さん働いてるんだ。 「お待たせ」 救急箱を持った田島さんが、私の隣に座る。 沈んだソファーでバランスを崩して田島さんに寄りかかってしまい慌てて体を起こそうとすると、腕をつかまれる。 「大丈夫。襲ったりなんかしないから、体リラックスさせて。 じゃないと消毒できないし」 ニコっと笑う田島さん。 「襲うなんて、そんな!」 そんな事、思ってないですし! 「少し痛いけど我慢して」 脱脂綿に消毒液を含ませたものが傷口に触れる。 独特の痛みに眉根が寄ると、『もう少し我慢して』と言われた。 キュっと唇を噛みしめて、痛みに耐える。 綺麗に消毒をしたあと、『これすごく擦り傷に効くんだよ』と軟膏を塗った後、ガーゼをして包帯を巻かれてしまった。 「あの、大袈裟です」
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