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「あの、先輩」
「なんだよ、まだ何かあるのか?」
「いえ、その、ちょっと聞きたい事が」
「聞きたい事?」
氷川が改めて聞いてくるなんて珍しい。俺は素直にそう思った。
「あのですね、やっぱり氷川って、うざいですか?」
「うざい」
「即答しないでください!」
景色から氷川に目をやると、真剣な表情で俺を見つめていた。ったく、本当に面倒な奴だな。
俺は遠くを見つめながらため息をついた。
「お前は、俺の事がうざいか?」
「はい」
「……」
「やめてっ! 無言で拳を振り上げるのはやめてっ!!」
「……真面目に答えろよ」
景色を見ているため氷川の表情はわからない。だがなんとなく予想は出来た。きっと氷川は笑っている。
「もっと優しかったら、先輩はモテモテになると思いますよ?」
「そうか」
「あれ? こんな言葉で氷川の思ってることわかりましたか?」
「ああ」
俺は視線を青空へと移し、そして氷川の聞きたいことを答えてやった。
「……お前と同じだよ」
「なにがですか?」
「お前をどう思っているか」
そう言った途端、屋上に暖かい風が通り抜けた。今の季節が春だと感じさせる、気持ちの良い風。俺は一つ伸びをして、氷川の方へと振り向いた。
予想通り氷川は笑っており、不覚にも笑顔が可愛いと思ってしまった。まぁ、こいつも元は悪くないからな。
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