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俺が拳を振り上げると氷川はうずくまり、小声で呪文のようにごめんなさいと繰り返した。
全く、殴られるのが嫌だったら黙ってろっての。俺は拳を収め、後ろにある手すりに寄りかかる。
「いつまでうずくまってるんだよ」
「ごめんなさいごめんなさい……。あっ、もう平気みたいですね」
「ったく。面倒だな本当」
俺は氷川に背を向け、屋上から広がる景色に目を向ける。
この学園は高く、屋上はそれなりに景色がいい。近くにある公園はもちろん、よく晴れた日には隣町までうっすらと見える。
高いこともあって風は多少強いが、逆に俺はそれが気持ちよく、暇があったらよく屋上に足を運んでいる。
まぁ、休み時間は人が多いからこういう授業中しか来ないけど。
今日は天気がいいので隣町がうっすらと見える。なんだか遠くを見ていると、なにもかもがどうでもよくなってくる。
面倒な学校に面倒な友人、そしてこれからの将来。
なにもかも、どうでもよくなって……
「先輩、何を見てるんですか?」
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