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俺の思考は、氷川の無神経な声で遮られた。
「おい」
「なんですか?」
俺は軽く氷川の頭を殴った。先ほどまでとは言わないが、気持ちのいい音が響く。
「い、痛いです。氷川が何をしたって言うんですか」
「俺の考えごとを邪魔した」
「はい? 意味がわからないんですけど」
「……もう一発殴ってやろうか?」
「ごめんなさいもう言いません許してください」
「ったく」
こいつは本当に面倒な奴だな。いつからこんな面倒になったんだ? 氷川とは一応幼馴染みだから色々と知ってるはずなんだが。
「おい、お前いつからうざいんだ?」
「何ですかいきなり! そんなこと知りませんよ! っていうか面と向かって聞くことですか!?」
「そうだよな。そんなこと自分でわかるわけないもんな」
「なんですかその同情の目は! 氷川は何も悪いことしてませんよ!?」
「俺が悪かった。ゴメンな」
「なんで謝るんですか!? そんなに氷川ってうざいんですか!」
「ああ、うざいな」
「ああっ、そんな! うざかったなんて……」
……そうだな。こいつは昔からこんなうざい奴だった。
氷川とのやり取りでなんとなく昔を思い出す。俺が突き離しても一生懸命についてくる。バカにしたり殴ったりしても、その後は笑って話しかけてくる。
氷川みたいなのを健気というのか、それともアホというのか。どちらにしろ俺にとってはいい迷惑だ。ため息を一つつき、俺は再び景色へと視線を戻した。
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