姿のない声

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私が中学生の頃おじさんが亡くなりました。 そのお通夜での事です。 私はお線香の匂いが苦手なのと、その場の空気が嫌で、度々外に出て風に当たっていました。 扉を空けると細い路上になっており、すぐ目の前は民家の塀で建物は一階建てでした。 周りには民家があるにもかかわらず、夜10時くらいなのに辺りは静まり返っていました。 焼香を終えた人達に頭を下げ、人が減った頃におじさんの眠る棺へ歩み寄り顔をよく見ました。 安らかに眠る顔が青白く、唇が紫色になっているのを見て、思わず涙が溢れて来ました。 ‥と思わず吐き気を覚え、また外へ出ようとしました。 扉を開けた瞬間 鳥肌が体全体に走りました。 ‥話すというより叫ぶに近い声。 男の人や女の人が一斉に話しているような‥言葉が重なり合って聞きとれない声。 辺りを見ても人はおらず、いつしか声は消えていた。
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