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その兎は後ろ脚で人間のように立った。
「私、主兎(あるじうさぎ)と申します。どうぞお見知り置きを」
主兎は前脚を胸の前で撫でおろし、お辞儀をした。
「ところでお嬢さん。あなたは何故、泣いていたのですかな?」
「あー……主兎さんには見られてたのね」
主兎はそれには何も返さず、眼を細めで笑った。
そして、細めていた両目を開き、驚くべきことを口にした。
「――ではお嬢さん。話しにくいと言うのなら、馬車に乗って、二人でお茶しませんか?」
女の子は仁王立ちになって、背丈が女の子の膝くらいまでしかない主兎を見下ろした。
「それってデートのお誘い? しゃべる兎がいい度胸じゃない。でも残念でした。勝手に家を出たら、ママに怪しまれるわ」
「いえ、それについてはご心配なく。お嬢さんの分身をつくることくらい、容易いことです」
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