序章その壱 日常と僅かな変化

10/23
前へ
/204ページ
次へ
――――――――――――――― キーンコーンカーンコーン―…… 午後5時になり、時間を知らせるチャイムが地下室に鳴り響く。 幸実はピンセットを机の上に置き、伸びをする。 そして、大分分けられた陶器をザッと見て、 ――大分できたな。   この分なら今日徹夜をすれば   全部分け終わるだろう。   そしたら、明日から   修復できる―― 満足げな表情をした幸実は立ち上がった。 すると、 「高崎さん、帰るのですか?」 と、彼女と同じ作業をしていた学芸員の一人、山口が気付き話しかけてくる。 しかし、幸実は首を横に振った。 「いや、区切りがいいんで  夕食を食べに行こうと思って…  お二方も行きますか?  近場の定食屋ですが、  なかなか旨いですよ」 *
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加