序章その壱 日常と僅かな変化

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割れている陶器を直接触らないように手袋をした上、欠片をピンセットで摘まみ並べている様子を見るかぎり簡単な作業をしているように見えた。 しかし、幸実は疲れが滲み出ているような表情で欠片を見ながら、何かを口の中でゴニョゴニョと呟いている。 端の目立たない場所で、欠片を並べるという地味な作業をしている上、そのような行為をしているため、暗いというよりは端から見れば一種の気味が悪く近寄りがたい光景になってしまっている。 しかし、ここではこんな光景も珍しいことではない。 彼女の近くの席で似たような作業をしている中年のおじさんも、若い男性も全く同じ状態になっていた。 「コーヒー飲むか」 「!」 ピンセットで欠片を摘まみ上げ観察していた時、いきなり背後から声が聞こえ、幸実は驚き欠片をポロリと布の上に落とす。 *
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