序章その壱 日常と僅かな変化

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「笑ってるし……」 「笑ってねぇから」 河木はすかさずツッコミを入れたが、 幸実は再び即答で否定した。 しかし、コーヒーを飲んで誤魔化してはいるものの、肩が微かに震えているので、笑っていることは一目瞭然だった。 そんな幸実の様子を見て河木は溜め息を一つつき、唇を尖らせる表情をすると、 「もう勝手にしろよ。  というか、  普段は仏頂面のお前が  笑うなんて珍しいな。  明日は槍が降るんじゃね?」 拗ねたようにそう言う。 「三日もほとんど  一睡もしなければ、  誰だってテンションが  ハイになる」 幸実は仏頂面呼ばわりされたことも別に気にするわけでもなく、あっさりとした様子でそう言う。 そして、幸実は流し目で机の上で山となっている陶器の欠片を見て、笑顔から一変、げんなりとした表情になった。 *
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