序章その壱 日常と僅かな変化

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「この陶器は江戸初期に  作られたものだ。  一種類だけではなく、  何十種類もの陶器が  バラバラになった状態で  発見されたんだ。  修復するには、まず  同じ種類ごとに  分けないとならない。  全く、面倒なことだよ」 そう言い肩をすくめる幸実に、 「大変だな。  一人じゃできないから  山口さんと津田さんに  手伝ってもらっているのか?」 河木は他人事のような気軽さでそう言うと、彼女から離れた場所で作業を続けている二人を見た。 それに対し幸実は微かに眉をひそる。 「手伝ってもらって  いるのではなく、  手伝っているんだ。  どうだ?河木さん。  暇そうだから  あんたも手伝うか?」 「いや、俺はまだ仕事が  残ってるし」 幸実に誘われた河木だったが、こんな地味で疲れる作業はごめんだとも言いたげに即答で断る。 *
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