序章その壱 日常と僅かな変化

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しかし、幸実は河木のその言葉を予想していたらしく、大して気にすることもせず、コーヒーをグィッと飲んだ。 そして、飲み終えたコーヒーカップを河木に渡し、 「ありがとうな。  二人にも入れてやってくれ。    これは目が醒めるから」 そう言って河木にニヤリと笑いかける。 「目が醒めるって、  遠回しに不味いと  言ってるのか?」 カップを受け取りお盆に乗せた河木は、意地悪そうに唇の端を上げてそう言う。 「不味くはねぇよ。  ただ信じられないくらい  苦いだけだ」 「それを不味いと世間では  言うんじゃないのか?」 「かもな。  だが、職場にある  コーヒーだし  期待するだけ無駄だ」 「違いない」 散々コーヒーを貶した後、二人は軽く笑い合う。 そして、幸実はピンセットを持ち作業を再開させ、河木は二人にコーヒーを入れるため給湯室に戻って行った。 *
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