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「危ないですぞ、紅奈(くれな)様!!」
ほろ暗い岩道をよろけながら歩く少女の後で、白髪頭の男は困った顔で言った。
男の名は影(かげ)。36才。全身黒い服に身を固めた長身の男であった。
「お前は心配性じゃの。私は大丈夫じゃ」
赤く長い髪を揺らしながら、少女は踊るように岩から岩へと渡った。
少女の名は紅奈(くれな)。15才。丸い大きな目で、明るい着物に身を包んだ短身の少女であった。
「そりゃあ心配もしますよ。私はあなたの――」
「しっ!!黙って!!」
後から手を伸ばす影の言葉を、紅奈を振り向き静止した。
「声が近くなった」
紅奈の言葉に、影は少しうんざりした表情を浮かべた。
2人は今、ある洞窟の中にいた。
とても大きな洞窟だ。道幅は影が両手を広げても届かなく、奥は暗くて見えなかった。
始まりは『洞窟の奥から誰かが呼ぶ声がする』という紅奈の言葉だった。
影には何も聞こえない。
が、紅奈は『いや、聞こえる。見に行くのじゃ』と、きかなかった為、嫌々ながらも洞窟の中へと入ったのだった。
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