哀しい眼

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 それにしても、あいつは一体どういう人間なんだろう。  幼稚でふざけた言動。 やたらと近い距離。  そして、店長が言いかけた、親からの暴力…。  暴力のせいであんなおかしな性格になったのだろうか?  ふと、暴力とあの哀しい眼の因果関係が結び付く。  市原が幼稚で子供みたいなのは、外見のせいだけじゃなくて、ずっと甘えていたい、今だに、愛情を持った親を探しているのでは…。  ニャー。  マンションの駐輪場にはいつものようにミルクがいた。  「ただいまミルクー。」 私はポストに少しだけストックしてあるキャットフードをミルクの口元へ持っていく。  ミルクはピンクの舌をちろりと出して、私の指からキャットフードをさらっていった。  「はぁ~、なんだか今日は疲れたよぉ。でもミルク見てるとほんと癒される!じゃあ、また明日ね。おやすみー。」  私は猫のキーホルダーについた家の鍵を突き出しながら、ミルクの元を離れた。
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