愛撫

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 「んー…。んー。どっちにしようかなー!?」  市原が私に聞こえるように声を出しながらケーキを選んでいる。  「うぅんー。うーん。」  「何をそんなに迷ってるの?」  うるさくて私はつい市原にかまってしまった。  「この、いちじくのタルトか、この黒いの!ねぇー、なんでこれ、黒いの??」  市原が選んだその2種類を見て、はっとした。  正直、和栗のモンブランや苺のショートケーキ、抹茶のロールなんかに比べれば、この二つは人気がない。しかし、本部としては品揃えとしてどうしても置いてくれというので、ロス(廃棄処分)覚悟で置いている二つなのだ。  「それは栗のふわふわシフォン。黒いのは竹炭を練り込んでいるから。デトックス効果があるらしいのよ。」  「デトックス??」  「そう。体から悪いものを出す力よ。」  「ふーん、なんかよくわかんないけどスゲェ! オレ、決めた!」  「栗のふわふわシフォンにするの?」  「ううん!両方!!」  「二つも食べるの!?」  「うん!だから星崎さん、オレンジジュース奢って~♪」 呆れた。この子は奢ってもらうことしか考えてないのか。
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