愛撫

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 今日ロスになるであろうケーキを二つも買ってくれると言うので、私はオレンジジュースを奢ってあげることにした。  市原は「わぁぃ」と幼稚に喜びながら、ケーキを一口食べる間に全てのオレンジジュースを飲み干した。    「星崎さぁ~ん!ごちそうさま!」  市原が食べ終わった皿を持ってくる。  「ねぇ、オレの体から“悪いもの”出てった?」  どうやら竹炭のデトックス効果をもう期待しているらしい。  「見た目じゃわからないわよ。」  「なんだー。“悪いもの”全部、出てってくれたらいいのに。」  市原は俯いてまた哀しい眼を見せる。  そんなに悪いものが溜まってるようには見えないんだけどなぁ。  「わかってるんだ。そんなに簡単にオレは変わらないことが。」  市原はぽつんと呟くように独り言を吐いた。  「?」  そのときの私には、まだその台詞の意味は少しもわからなかった。
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