危険な反発

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 「さぁ、仕事仕事~!1,2卓4名様のお料理できたよ!一緒に持ってって!」  「はーい!千里!」    今日はいつもより忙しい夜になった。  今朝の放火事件のことなど、もうすっかり頭から消えた。  満席になり、待ちも出る。  ホールには市原と荒井が、キッチンには高橋と私がいたが、それでも仕事でいっぱいだった。  注文と会計が重なる。  その時入口ドアが開く。  「ここにあるケーキを急いで全部詰めて。次の電車に乗らなければならないの。」  ケーキを持ち帰られるお客様が来店した。  夫婦なのか、40代の男女である。  全部というと、20個程になる…。  他のお客様の会計中に話し掛けられた市原は驚く。 「ぜ、全部ですか?!少々、お待ちくださいませ。」  市原のピンチに気づき、私はキッチンを高橋に任せてショーケースまでやって来た。  「千里、このお客様がショーケースのケーキを全部お持ち帰りしたいって。」  市原がかなりの早口で言う。  「全部!?…了解。  お待たせ致しましたお客様。…計21個になりますがよろしいでしょうか?」    私は焦りながらも必死に笑顔をつくる。店頭のベンチで席が空くのを待っているお客様の顔色も来になる。すでに2組のお客様がお会計に席を立たれていて、今すぐにでもテーブルをリセットしたい。急がなければ。    「全部って言ってるじゃない。早くして!?」  短気な奥様だ…。
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