哀しい眼

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 Garden Modeに定休日はなく、オープンはモーニングセットを出す午前7時から。夜は客の入りによっても変わるが、原則深夜3時までの営業となっていた。日中は主婦達のガールズトークの場として、夜は会社帰りのサラリーマンや、近所にある大学の学生達で賑わっている。  社長は週休2日取れと言うが、社員2人と数名のアルバイトで週休2日採るのは実際には難しい。 深夜に小規模な団体の予約が入ることも珍しくなく、店長の高橋真治(28)の勤務は昼前から深夜3時過ぎまで続くことも珍しくない。逆に私はオープンの朝7時前から、夕食需要の終わる夜8時まで店に居ることが一般的だ。  週に一度取れるかどうかの休日には、メインのパートさん、牧野祥子さん(35)に全て任せている。  しかし問題は深夜の営業だった。店長が休みを取ると、私が深夜3時まで働かなくてはならなくなるが、現実問題、翌日も7時前から店に出なくてはならなくなる日もあり、体力がもたない。  そこで、店長は絶対的に信用のおける人物を深夜のアルバイトとして雇いたいと、前々から言っていた。  普通の大学生なんかは、店長が休みの日に限って、「急にサークルの飲み会が入ったんすよ~」とか、「明日の試験落ちたらまじ、留年なんす。」と言って休みたがる。そうなると店長の休日はいつも消えてしまっていたのだった。  それに比べると私には牧野さんが居てくれて随分と助かっていた。私はそんな店長を見ながらも、毎日12時間以上の勤務には体力の限界を感じていて、店長の代わりに私が…なんてことは言い出せずにいた。
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