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第一章 発砲
古来、下総国(千葉県)は馬の産する処として名高い。源平時代、宇治川の合戦で先陣争いを演じた名馬「池月」もここで育ったといわれる。
江戸時代に入ると、幕府はこの国の各所に「牧(まき)」と呼ばれる馬の放牧場を設け野馬(のま)を育てた。育てられた野馬のうち良馬は幕府が徴集し、駄馬は付近の農民に払い下げられた。そしてその牧を管理したのが「牧士(もくし)」呼ばれる半農半士の役人である。
そんな下総国の牧のひとつ、小金牧(こがねまき)の一角で起きた“発砲事件”からこの物語は幕を開く…。
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