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俺とひかりが男と女の関係ではないと知って、嬉しそうに診察室を出ていく大山。
そうか…、きみは、ひかりを…。
「大山くん!」
思わず、呼び止めていた。
…呼び止めて、一体なにを言うっていうんだ…。
「なんすか?」
「……いや…。」
「伊木先生?」
「…えー…っと…、頼むから、ひかりを傷つけるような事だけは……。」
……何を言ってるんだ、俺は…。
「心配無用ですって。」
そう言って、にかっと笑って出て行った大山。
彼が、頼りになる奴だということは確かだ。
きっと、ひかりの事も大切にしてくれる。
俺みたいな、嫁に逃げられた情けなくて、ややこしい、年いった男なんかより
大山みたいな若い奴のほうが、いいに決まってる。
ひかりにとっても、それがいいと思う。
俺は、自分の中に芽生えていた淡い恋心みたいなものを
ひそかに胸の中にしまい込んだ。
大きな喪失感を覚えた。
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