♯19 葛藤。

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俺とひかりが男と女の関係ではないと知って、嬉しそうに診察室を出ていく大山。 そうか…、きみは、ひかりを…。 「大山くん!」 思わず、呼び止めていた。 …呼び止めて、一体なにを言うっていうんだ…。 「なんすか?」 「……いや…。」 「伊木先生?」 「…えー…っと…、頼むから、ひかりを傷つけるような事だけは……。」 ……何を言ってるんだ、俺は…。 「心配無用ですって。」 そう言って、にかっと笑って出て行った大山。 彼が、頼りになる奴だということは確かだ。 きっと、ひかりの事も大切にしてくれる。 俺みたいな、嫁に逃げられた情けなくて、ややこしい、年いった男なんかより 大山みたいな若い奴のほうが、いいに決まってる。 ひかりにとっても、それがいいと思う。 俺は、自分の中に芽生えていた淡い恋心みたいなものを ひそかに胸の中にしまい込んだ。 大きな喪失感を覚えた。
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