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体中が痛くて、眠れないまま夜が明けた。
「おはよう、眠れた?」
朝、先生が様子を見に来た。
朝食とにらめっこをしていたあたしは、その険しい顔のまま先生を見た。
「……眠れなかったみたいだね。食欲は?」
朝ごはんどころではない。
口の中が、痛くてしみる。
夜中に水を飲もうとして悶絶したくらい。
頬が痛い…。
そういえば、階段から落とされる前に、パンチをくらった。
思い出して、左の頬をさする。
「…あらら、少し腫れてるね。昨日は気付かなかった。」
……医者のくせに。
もしかしてまだ新米?
研修医とか?
「今、医者のくせに、とか思ったろ。」
「…思ってません。」
「待ってて。冷やすもの持ってくるから。」
そう言って、出て行った。
パタパタと、スリッパを鳴らす先生。
その小走りの足音が、妙に耳に残った。
やっぱり、新米のペーペーなんだ。
そんな雑用、看護師さんに頼めばいいのに。
頬に手を当てながら、明るくなった室内を見渡した。
ベッドの上に、担当医の名前があった。
『伊木 航平』
いぎ…?こうへい。
さっきの先生かな…。
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