♯3 麻痺。

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しばらくして、保冷剤をタオルに包んで持ってきてくれた先生。 「はい、当てといて。」 「…はぁい。」 「しばらく、食べるのも飲むのも苦労しそうだね。」 「…ダイエットになりますね。」 「それ以上痩せるつもり?骨と皮だけになるよ。」 真面目な顔して、あたしを見て言った。 …怒ってるの…? 冗談で言っただけなのに…。 この人には通じないのかな。 あたしを見る先生の目が真剣すぎて、直視できなくて、目線を少し落とした。 先生の白衣についている名札が目に入った。 『伊木 航平』と書いてあった。 この人、あたしの担当医なのか。 「…今日…、検査終わったら、すぐに帰れますか?」 「…結果次第だけど。」 どうせなら、うんと悪いほうがいいな。 そしたら病院に居れる。 病院に居たら、殴られない。 検査が終わって、何事もなくて、病院をでたら、どうしよう。 アパートに帰る? …引っ越し…、しなきゃ…。 でもどこに? お金は? ……怖いよ…。 「…なに、考えてるの?」 先生が、あたしの顔を覗き込む。
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