♯3 麻痺。

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覗き込まれて、思わず顔をそらした。 「何も考えてません。」 「彼のこと?」 「いいえ。」 「ふるえてるけど大丈夫?」 「大丈夫です。」 「…そ。ならいい。」 どうしても言えなかった。 先生は気付いてる。 先生に言ったら、何か変わるの? 助けてくれるの? …弱そうだけど、この先生。 コンコン、とドアを叩く音。 思わずビクっとして、目が泳ぐ。 「岡さ~ん、お部屋、代わりましょうね。」 明るい声で入って来たのは、看護師さん。 「あ、伊木先生いらしたんですね。お部屋の準備できたので移動しますね。」 「うん、頼むね。」 …え。 部屋代わるの? 「ごめんね、岡さん。相部屋に移ってもらうけど。昼過ぎまで異常なかったら、退院できるから。」 …検査は? 「さ、岡さん。行きましょうか。」 看護師さんに促されて、立ち上がった。 …痛い。 歩けないほどでは無かったけど、少し大袈裟に痛がってみた。 「大丈夫?歩ける?」 心配そうに、あたしを支えてくれた看護師さん。 お願い…。 このまま、病院に居させて…。
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