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10月とはいえ、まだまだ暑い日が続いていた。
なのに、寒い、と思った。
「おかえり、ひかり。」
逆光で、中尾の表情が見えない。
「…た…だいま…。」
「なに玄関に突っ立ってんの。入れば?」
「…うん…」
恐る恐る、部屋に足を踏み入れる。
刺激しないようにしなきゃ…。
何度も何度も自分に言い聞かせた。
そして、中尾の隣にちょこんと座る。
とたん、抱きしめられた。
「…心配した。ごめんな、ひかり。ごめん。心配で気が狂いそうだった。」
…あたしは恐怖で気が変になりそうだよ…。
「俺、ひかりが良くなるまでここに居るから…。」
耳元で囁く中尾。
……やめて…。
あんたが居たら、一生良くならないよ…。
「好きだよ、ひかり。」
そう言って、キスをされた。
深い、深いキス。
口の中が痛い…
なんて、とても言えなかった。
結局、キスだけでは終わらずに
朝までベッドで抱き合った。
退院早々、一方的に抱かれた。
もう当分、気持ちいいなんて感じたことはない。
されるがまま…。
求められれば応じた。
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