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あたしは、こんなにも従順なのに
中尾は何が気に入らないんだろう。
「…なぁ。」
ベッドで、後ろから抱きしめられたまま、あたしに問い掛ける中尾。
「階段から落ちていく時さ…」
「…なに…?」
「……なんで笑ったの?」
「え……、笑ってた…?」
「うん。」
「…おかしいね。…変だね、あたし…。」
…笑ってたのか…。
恐怖も麻痺してくると、そうなるのかな。
中尾に対する恐怖も、じきに麻痺して何も感じなくなるかな。
何も感じなくなれば
あたし
この人を殺してしまうかもしれない…。
退院してから三日目の朝。
あたしは中尾の腕の中で、こんな恐ろしいことを考えていた。
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