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僕は宮村に突き刺さっていたそれを抜くと、自分に向けた。
落とし前は自分でつけなければいけない。
これは僕の罪だ。
いーちゃんへの贖罪だ。
僕は深呼吸を一回すると、それを腹に深々と突きさした。
激しい痛みが身体を襲う。
いーちゃんもこれを味わったのか。
僕の身体から力が抜け、足から崩れ落ちる。
「―――――っ。」
意識が朦朧とする中、桃葵が駆けつけてくるのが霞んでいく視界から見えた。
「な、なにしてんだよ!!死んだら駄目だ。約束破る気なのか!」
「………約、束は……破るため、に、あるも、のだろ…」
「こんなときにまで戯言言うな!俺は…俺は、こんな約束をした覚えはない」
「ごめん。桃葵……いや、成瀬。本当、に、ごめんな。でも……他、に……方法が見つから、なかったんだ」
サイレンの音が聞こえた。
いずれ、警察がやってくるだろう。
でも、あの事件の真相は僕が墓場まで持っていくつもりだ。
それが―――僕の選んだ道なのだから。
成瀬の声が徐々に聞こえなくなっていく。
そして。
僕はゆっくり目を閉じた。
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