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もう一人、凰より五センチ程身長が低く、おれよりは少し太いが細い始は、理知的で賢そうな風貌(ふうぼう)をしていて、口はヘの字で大きく、さらに鼻筋も通っていた。
髪型はさらさらとしている、男子としては少々長い黒髪を悠然と垂らしていた。
服装は詰襟、つまり学ラン。
凰の様に着崩してはいなく、ちゃんと着ているのだが、妙にカッコイイのがとても嫉妬心を煽る。
始は、見た目だけはクールなイケメンなのだが、考えていることは――
「ヘイ水月! お前がこんな時間に登校すんなんてどんな風の吹きまわしだぁ!? こりゃ明日は雨だね、いや参ったぁ!」
いきなりテンション全開で舌を回す始。
「朝からうぜーなこいつ」
おれは今の心境のありのままを吐き捨てる。
「あぁ、今日は何故か知らないがいつもよりテンションが高い。助けてくれ水月」
凰が冗談半分に助けを求めてきた。
「酷いな二人ともー! こんなイケメンを弄るなんてさ!」
――そうだ、こういうことなのだ。
こういう奴なのだ。
無駄にテンションが高く変態で意味わからないことを口走る自称紳士のオタク。
なのに無駄にイケメンで頭がよく、細いのに運動もできる。
しかも、いざという時は冷静に対処出来る奴だから頼られる変態。
畜生、なんだこの二人は。
才能に満ちあふれやがって。おれはキャラの濃さも顔も頭も運動も至って平凡、平々凡々。
こいつらに比べたらかなり見劣りがする。
唯一のおれの取り柄と言えばこいつらと友達ってことだろうか。
して、おれと始が似てるとよく言われるのだが、どういうことだ。
「いくらイケメンでも中身が中身だから……な? 凰」
おれが悔し紛れにそう視線を向けると、凰は苦笑いして、
「まぁ、そうだよな」
と苦笑して同意した。
「つまり始は残念なイケメン、と」
本人は知らないが、コレ、真面目にコイツのあだ名である。
「おいおいおいおいおいおい!! そりゃねぇんじゃねーの!? 全く水月ちゃんはひでーなー!」
始はそう、テンション高めで喜んだ。
なんで喜んでんの。
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